祖父の見守り

先日1年ぶりに
   MRI検査を受けてきました。

   医者のくせにといわれそうですが
   思い切って告白すると
   MRI検査は苦手なんです。

   これまで
   何度も患者さんには
   MRIを受けていただきました。
   じっとしてないといけないし
   CTに比べて時間がかかるし
   音もするし
   こどもの場合は
   お薬で眠ってもらって
   検査をしていました。
   敏感なこどもたちは
   何かされると予感するのか
   興奮してるのか
   鎮静できず、興奮状態もつよくなって
   後日に予約を取り直して
   再チャレンジを余儀なくされることもあり
   MRI検査は
   主治医としても
   プレッシャーの検査でした。

   そのMRI検査を
   今回の入院中に
   初めて受けることになりました。

   耳につく
   うるさい騒音のする
   MRI室で
   じっと、じっとしないといけない
   ということを
   初めて経験しました。

   正直な気持ち
   苦痛でした
   閉鎖空間で動けないのは
   拷問にも感じ
   次は無理・・・と思いました。

   退院後受けたときも
   初めての病院だったし
   今後も診てもらうので
   覚悟して受けましたが、
   たまりませんでした。

   できれば
   次回は短時間で済む
   頭部CTをお願いしようと
   思ったのですが
   先日
   1年ぶりにMRIを撮りましょうと言われたとき
   閉鎖空間が苦手なので、できれば・・・といいかけると
   そうですか、鎮静の薬を使いましょうか?と
   提案されましたが
   自分はおとなだし
   そんなことはプライドが許さず
   覚悟して受けることにしました。

   どんな拷問でもうける覚悟で
   MRI台に横になりました。

   始まりました。
   落ち着くために眼をつぶり
   深く呼吸を意識していると
   ふと
   思い出したのです。

   僕が
   大学生のとき
   電気工事をひとりでしていた父が
   漏電して
   入院したことを。
   その時、ヘルメットと、
   金属製のものを使ってたので
   電気の流れが変わり
   頭をかすめた程度で
   電気がからだを貫通するのを免れ
   一命をとりとめたことがありました。
   また
   父は10年以上前、脳梗塞を起こし手術もしましたが
   全く麻痺などの後遺症もなく
   元気に今でも暮らしているのです。
   そして
   今回僕も
   脳出血を起こしたけど
   仕事も生活も変わりなく復帰しています。

   そんな父のことなどを
   まぶたに思い浮かべていると
   僕が
   生まれてまもなく他界した
   僕の記憶の中には全くない
   祖父が現れ
   大丈夫、心配するな、治してるぞと
   いいながら
   僕の頭をなでてくれているのでした。

   そういえば
   祖父は祖母の介護の疲れから
   脳出血を起こして亡くなったという
   話を聞いたことがあります。

   僕も、父も
   祖父から守られてたんだ
   同じ陽気で苦しまないように
   守ってくれたんだ。
   今も、寄り添って下さっている。

   感謝の気持ちで
   胸が熱くなり
   長いはずのMRI検査も
   あっという間に終わりました。

   結果は
   祖父の思いのおかげで
   何も異常はありませんでした。

   実際会ったことのない
   全く記憶のない
   おじいちゃんに会い、
   今にも続く愛情を感じた時間に
   感謝でした。

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